[ 前回つづき ]チャムナンさん宅での村の村長方との対話を終えた後、
全員でこれまで設置した井戸の視察へ行ってみることに。
まずは記念すべき第一号の井戸。チョムナン宅前の井戸。
2012年完成。立派な石のプレートまで刻んでいただき、
当時の地元価格でプレート込み1基200ドル。(約16000円 ※1$=80円)
現地の業者に依頼し、井戸は深さ60mまで掘られている。
この「深さ」というは大切で、約10mでは雨水がしみ込んだ層でキレイな水ではない。
井戸は30m以上は掘らなければ、豊富でキレイな水は出ないという。
井戸の下に付いている水色の器具はモーター式ポンプの接続口。
水の出が悪くなるとポンプで強力に水を吸い上げることができる。
この時期は乾期だったため水の出はイマイチだったが、これから雨期になれば問題ないそうだ。
次なる井戸を見に行く。・・・民家の裏道を抜けると、、
広大な畑があらわれた。
緑生い茂っているのはチョムナンご両親が栽培するトウモロコシ畑。
そんな畑の入口に、、
村で一番新しい15基目の井戸を発見(!)。
まだ一週間前に完成したばかりなので整地等はこれから。
現在水の出はサムボー村の井戸でも一番良いのだそう。
チョムナンお父さん:『この井戸は畑専用の井戸です。
私達だけでなく村人全員がよく使う井戸になると思います。』
この井戸にはさらに強力モーター式ポンプも取り付け、広大な畑に直接水が供給される予定。
畑への「水やり」が安定することによって、村の人たちの「食」にも良い影響が出てくれればー
・・・井戸はよく見ると『ベトナム 2015製』と記載されていた。
器具自体はユニセフによって作られたもの。
カンボジアの井戸は「Made in 〇〇」によって耐久年数が決まる。
国内で流通している井戸で最も耐久年数が高いものが『インド製』。・・・それでももって『三年』。
一般的な井戸になると『ベトナム製』や『カンボジア製』で、耐久年数は『一年』という、、。
サムボー村では予想通り、これまで設置した井戸の古い順から故障が起き始めている。
取っ手部分が破損したり、水の出が悪くなったり、、
あるいは子ども達が井戸の中へ砂利を入れて遊ぶ事により蛇口が詰まるなど、、。
・・・でもそれはすべて想定の範囲内。井戸の故障はいつか必ず起きること。
だからこそ井戸建設で最も大事なことは『設置したら終わり』ではなく、
当分はその後のメンテナンスや修理など、注意深く見守る必要があるということ。
定期的なメンテナンスと修理によってこそ、井戸は長く保つことが可能なのだ。
ちなみに故障した井戸の修理費は現地価格で5000円くらい。
「5,000円」と聞けば安く感じるかもしれないが、村人の年収は5~10万円程度。
基本的には自給自足の静かな生活を送っている人たちだ。「5,000円」は大金なのだ。
・・・そんなことから、一度井戸が壊れると修理されずに「一生放置」となることが少なくない。
・・・そもそも村の人たちはどのように水を確保しているのだろう?
それは、各家の雨どいの先に水瓶が設置されており、雨水は全てこの水瓶に貯まるようなっている。
最初はとても濁った水。この水を2〜3日放置し不純物を沈殿させてから、
その上水をとって料理やお風呂など、生活用水として使用している。
飲み水として使うには、ここからさらに湧かして飲むのだそう。
【愛センター】の子ども達が絵に描いていたのがコレだった。
・・・そんな生活をしているサムボー村の人々。
井戸の設置により、暮らしもずいぶんと楽になったそうだ。
広大な畑を横切り、次なる井戸へ。
カンボジアのニュース局、密着マーク。(笑)
次なる場所へ向かう間、今回通訳として同行してくれたNGO校OB キムタウと話をした。
彼は元日本の地雷撤去団体で働いていた経験があり、タイ国境付近では
地雷の撤去および井戸建設にも関わったことがあるという。彼の実際の目で見た
この村の井戸のクオリティーはどんなものか?率直に聞いてみたいと思っていた。
彼が思うこの村の井戸の状態は、思っていた以上にちゃんとしたものだったと言う。
・・・ただ、井戸の今後を長期的な目線で見てみると、
『皆さんの支援がもし今後離れたとしても、村の人たちで井戸が維持できるように、
井戸一基につき何世帯が使用しているかを明確にし、いつかは井戸を使っているコミュニティで
修理費をプールしたり、、そんな組織をつくる必要があると思います。』
・・・次の課題は、井戸を使用している人々での組織作り。「5,000円」のメンテナンスは
決して安いものではないが、最終的には村の人たちで組織が形成出来れば、、。
次回村を訪れた際には、そんな話も村長さんやチョムナンさんとできればと思う。
・・・話をしながら歩くこと10分、集落が見えてきた。
去年完成した井戸。
この井戸一基につき20〜30世帯の村人が使用しているそう。
近所の子ども達が、勢いよく水が出るところを見せてくれた。
・・・こんな笑顔を見ると、こちらまで嬉しくなる。
子ども達にキレイな水を飲ませてあげれることが嬉しい。
子ども達は、これまでに川や池の泥水を飲んでお腹を壊すことが頻繁にあった。
井戸の設置は、これまで病気にかかっていたものにもなりにくくなるということー
子ども達を狙うTVカメラマン(笑)
続いてやってきたのは、村の小学校の井戸ー
子ども達がたくさん集まってきた。
さっそく水の出をチェック。
透明でキレイな水が勢いよく出てきた。
僕らが顔を洗っていると、子ども達が群がり、真似をしてみんなも顔を洗いだす(笑)
井戸の設置は『水汲み労働』の改善にもつながったそう。
「水汲み労働」とは日本では馴染みのない言葉。でもカンボジアの農村部では
井戸が無い場合、近くの川や池に水を汲みに行くのが女性や子ども達の「仕事」。
この「仕事」があることによって、子ども達は学校に行けないこともあるのです。
・・・そんな重労働から子ども達、サヨウナラ。
最後は、村唯一の病院内にある井戸へ。
・・・かつてフランスのNGOが設置した井戸があったが、すでにもう朽ち果て放置されていた。
患者さんに水を提供する大切な場所ということで、、
・・・申し訳ないながら、数年間放置されたフランス井戸、撤去。(笑)
新たに設置し直した井戸で、患者さんにも再び安全な水が提供できるようになった。
この日、乾期の影響で水が出なかったのだが、、
必殺ポンプモーターを取り付けると、、
勢いよく水が溢れてきた。
・・・二年前、JSRの藤園くんの結婚式へ出席するため来日したチョムナンさん。
その帰りに私のお寺へ泊まりに来た際、キャンドルナイトの仲間を紹介し、
『故郷の村はどんな村なのか?』という話題になった。
チョムナン:『電気も水も通っていない。』
みんな:『え”-!?ちなみに井戸っていくらですか?』
チョムナン:『200ドルくらい。』
みんな:『本当に!?じゃあ、ココにいるみんなでとりあえず井戸1基作ってみようか?』
と急遽、そこにいたメンバーでお金をかき集め、チョムナンさんに手渡したのが全ての始まりー
それから三週間後、元々予定していたJSRの仲間でサムボー村を訪問してみると、、
井戸は本当に完成していたのでした、。
今ではCNL、JSRをはじめ、有志のお寺さんやご門徒さん方からたくさんの
ご支援を頂くようになり、今ではお陰様で15基目の井戸が完成するまでになりました。
・・・思いつき〜実行〜完成まで要した期間は3週間(笑)。
こうしたことが実現できた背景には、たまたま周りに素晴らしい仲間達がいて、
ひとつのアイデアを「面白い!」と思える柔軟な姿勢、
同じ価値観を共有できるメンバーに囲まれていたからこそ出来たのだと思います。
この”前代未聞”のプロジェクトの三周年と、井戸が15基を突破したことを記念し、
また、今回が「JSR」でのカンボジアの活動『10周年目』を記念して、これまで
プロジェクトに関わってくれた全てのCNLスタッフ、JSRの仲間達の名を刻み、プレートを作成。
サムボー村に納めて来ました。
今回、サムボー村の村長さんはじめ、村人からの直接の声を伺って、
このプロジェクトがもたらした村への変化を、とても感じることが出来ました。
井戸水によって子ども達の病気が減り、水汲み労働を無くすことに少しでも繋がってもらえたらー
・・・これはボランティアではなく「応援」。ヘルプではなく「サポート」です。
これからも無理をしない程度に、自分達ができる範囲で、継続した活動を行っていきたいと思いますー
また会いしましょう!